May 28, 2005
アイスクリームの表示について
昔、50円のカップアイスがあった。その名も「バニラレッド」。雪印乳業から製造販売されていたと思う(なお現在、雪印のアイスは、ロッテースノーから発売されている(参照:ロッテスノーの雪印アイスのページ))。 レッドと名前がつくからには、他の色のもあって、「バニラブルー」。もちろんアイスが赤かったり、青かったりはせず、容器が赤と青というだけ。レッドは50円で、ブルーは100円。違いはというと、確かレッドは「ラクトアイス」で、ブルーは「アイスクリーム」だったと思う。食品表示の「種類別」のところに表示があったと思う。この他に「アイスミルク」という分類があったはず。種別が違いがあるのだが、この基準は業界基準なのか、それとも国の基準なのか、気になったので調べてみた。
まず、どういう区分かというと以下のとおり。
| 種類別 | 乳固形分 | 乳固形分のうち乳脂肪分 |
|---|---|---|
| アイスクリーム | 15%以上 | 8%以上 |
| アイスミルク | 10%以上 | 3%以上 |
| ラクトアイス | 3%以上 | 3%未満 |
ラクトアイスより更にそれぞれの成分が低いものを、「氷菓」という。
そしてこの基準の出所はどこか。結論から言うと国(厚生労働省)の基準。まず、アイスクリームの表示基準に関して、直接根拠となるのが、食品衛生法の第19条第1項。
食品衛生法(抄)
第19条 厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品若しくは添加物又は前条第1項の規定により規格若しくは基準が定められた器具若しくは容器包装に関する表示につき、必要な基準を定めることができる。
次のこの法律を受けてつくられている省令が乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(厚生省令第52号)。しかし、この省令では(1)「アイスクリーム類」そのものの基準(乳固形分3%以上)、(2)「アイスクリーム類」には、「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」という分類がある、ということと、(3)「アイスクリーム」の基準、があるのみ。「アイスミルク」「ラクトアイス」の違いはここでは出てこない。以下同省令の「アイスクリーム」の基準。
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の別表(抜粋)
(6) アイスクリーム
1 成分規格
乳固形分 一五・〇%以上
うち乳脂肪分 八・〇%以上
細菌数(標準平板培養法で一g当たり) 一〇〇、〇〇〇以下
ただし、はつ酵乳又は乳酸菌飲料を原料として使用したものにあつては、乳酸菌又は酵母以外の細菌の数が一〇〇、〇〇〇以下とする。
大腸菌群 陰性
2 製造の方法の基準
a アイスクリームの原水は、飲用適の水であること。
b アイスクリームの原料(はつ酵乳及び乳酸菌飲料を除く。)は、摂氏六十八度で三十分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で殺菌すること。
c 氷結管からアイスクリームを抜きとる場合に、その外部を温めるため使用する水は、飲用適の流水であること。
d アイスクリームを容器包装に分注する場合は分注機械を用い、打栓する場合は打栓機械を用いること。
そして、判明したことは、法律や省令で定められているのは、ここまで、ということ。実は、アイスミルクとラクトアイスの違いは自主基準。名称は法律で定められているが、その中身は業界団体の基準ということになる。そして、実は、そこから先は管轄が厚生労働省から公正取引委員会(内閣府)へと移る。つまり、「アイスクリーム類」及び「アイスクリーム」の基準は厚生労働省だが、「アイスミルク」と「ラクトアイス」の違いは自主基準だけれども、公正取引委員会管轄。前者が公衆衛生のための基準であるのに対し、後者が公正な競争を促すための基準だと、国が判断しているところが面白い。具体的には次のとおり。
「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約」の第2条第1項から第5項で定義されている。冗長になるので引用はさけるが、公正取引委員会の認定を受ける必要はあるとはいえ、これは自主的な決まりで、法律の類ではない。業界団体である、アイスクリーム類及び氷菓公正取引協議会が制定しているもの。各業種で同様な団体があるようで、それらの連合組織が、(社)全国公正取引協議会連合会。同連合体のホームページにある、公正規約本文のA-5より、「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約」(施行規則を含む)はPDF形式でダウンロードできる。楕円形の中に「公正」という表示をつけるかどうかを判断しているのも、これらの業界組織だということがわかった。個別事情に応じたルールを国やその他の行政機関が完全につくるのは難しい。もし自主性に任せても問題ない範囲であれば、現状に適合するルール作りという観点からも、行政のスリム化という観点からも、具体的内容は業界の自主性を促す形で決定していくほうが望ましいのだと思う。
いつもながら、どうでもいい興味から出発したのだが、他の業界も具体的に公正競争規約がどのようなもので、どう機能しているのか、個別に調べると結構おもしろいかもしれない。とにかく、今回は、あの何気ないアイスの表示に、厚生労働省と公正取引委員会という二つの異なるタイプの行政組織が関与してたということが分ったのが一番の収穫。おもしろい。
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